口臭について
日本人はアメリカ人以上に口臭に強い「こだわり」を持っています。すなわち,東京のビジネスマンの70%が口臭を気にし、日本人全体でもI4%が口臭を気にしています(平成11年保健福祉動向調査)。人々の訴える症状から,わが国の歯科疾患の実情を推定すると,ロ臭症はウ蝕・歯周病に次ぐ歯科疾患となります。すなわち,口臭には大きい二一ズ(needs)が潜在していることになります。
1.口臭物質
口臭の原因物質は,揮発性硫黄化合物(Vo1ati1e Su1fur Compounds,以下VSCと略す)すなわち硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドであり、青酸ガスに似た毒性があります。しかしジメチルサルファイドは他のVSCより悪臭が弱く口臭の主成分となることは少ない。
2.口臭物質(VSC)産生の機序
生理的口臭では,硫化水素がVSCの中で最も多い。主な産生部位は舌背後方2/3で産生の至適pHはアルカリ性である。酸性下でVSCは産生されない。
口臭の基質(材料)は舌苔中の脱落上皮細胞や血球である。口臭は起床時が最も強い。しかし、食事で口腔内細菌や脱落上皮細胞が大きく減少し、□臭は減少する。さらに女性ホルモンは歯肉上皮の脱落や歯肉溝浸出液を増加させるため、月経時、排卵日、あるいはこれらの間で口臭が強くなることがあります。
3.歯周病による口臭
歯周病口臭ではメチルメルカプタン/硫化水素の比が高くなります。原因は、歯周病原菌がメチルメルカプタンを大量に産生し、また歯周ポケット浸出液中にメチオニンが増えるためです。また同比は歯周病重症度に従い増加します。
歯周病口臭は主に歯周ポケットから産生されると信じられていますが,これは誤りで全VSC量の約60%が舌苔から産生されています。歯周病では舌苔が増加します。
4.口臭物質は発ガン物質?
大腸ガン危険度の高い人々の大腸内では、硫化水素濃度が非常に高いです。
5.口臭症の分類と治療必要性(TN=TreatmentNeeds)
Ⅰ.真性口臭症
A.生理的口臭 TNl
B.病的口臭
A.口腔由来の病的口臭 TN1&2
B.全身由来の病的□臭 TN1&3
Ⅱ.仮性口臭症 TN1&4
Ⅲ.口臭恐怖症 TN1&5
TN1:説明および口腔清掃指導(セルフケア支援)
(以下のTN2~5にはいずれもTN1が含まれる)
TN2:専門的清掃(PMTC),疾患治療(歯周治穣など)
TN3:医科への紹介
TN4:カウンセリング(結果の提示と説明),
(専門的)指導・教育
TN5:精神科,心療内科などへの紹介
6.TN-1(セルフケアの重要性)
1)舌清掃と安全性について
• 舌清掃用ブラシを使用します。
• 舌清掃は1日1回
• ブラシは指先で持ちます。
• ブラッシング圧は、100g以下の力で行います。
• 15ストローク以内とします。
• やりすぎに注意しましょう。
2)洗口剤・歯磨剤・ガム・ミントなどがありますが、期待はほとんどありません。
参考文献:
八重垣 健:口臭臨床の実際、27~38日本歯科医師会雑誌 Vol.58 No.1 2005-4